新たなテクノロジーが世に出てきたとき、いち早く取り入れて活用するのは、いつの時代も若者です。
この本によれば、Z世代とは1996年年頃から2010年~2012年頃までに生まれた世代をいいます。2022年に10歳から26歳になる人たちの世代です。
Z世代は生まれたときからデジタルが浸透していた初めての世代である点に特徴があります。
Z世代もそうでない世代も、Z世代のことを知ることで、今後の世界がどのように変化していくのかを理解することができるという点で、必読の書といえます。
すみれ的おすすめ度
★★★★★
著者 | ジェイソン・ドーシー&デニス・ヴィラ |
発行年月日 | 2021年10月6日 |
出版社 | ハーパーコリンズ・ジャパン |
Z世代が世界を牽引する――ざっくりとした内容
著者であるドーシー氏とヴィラ氏は、世代に関する課題解決を専門としている。二人は夫婦であり、Z世代の娘を持つ親でもある。
本書では、「世代」を次のように再定義する。
地理的な結びつきがあり、おおよそ同じ成長過程の時期に同様の社会的・技術的・文化的出来事を体験しており、それゆえ予測可能性が高い集団の区分
『Z世代マーケテイング』P.57
世代ごとの名称と生年を表にまとめたものは次のとおりで、Z世代が労働人口の多くを占めるようになる日は近い。
世代の名称 | およその生年 |
Z世代(i世代) | 1996~2012 |
ミレニアル世代(Y世代) | 1977~1995 |
X世代 | 1965~1976 |
ベビーブーマー世代 | 1946~1964 |
伝統主義者世代(沈黙の世代) | 1945以前 |
Z世代の特徴を端的に表す一文を以下に引用する。
この世代は、物心ついた頃からアレクサがあり、メールやフェイスブックを古くさく感じ、人と一緒に何かをするときに対面で話すのが最善だとは思っていない。
『Z世代マーケティング』P165
それ以外にZ世代に特徴的なことを箇条書きにすると次のとおりである。
- ソーシャルメディアが第一のコミュニケーションツール
- YouTubeはインターネットで情報にアクセスする最初の画面で、大量の時間を費やす
- キャッシュレス決済は当たり前で、現金を持ち歩くことに不便さを感じる
- Z世代の12%はすでに老後資金を貯蓄しはじめている
- ダイバーシティやインクルージョン、社会正義や環境活動に取組む企業かが購買行動の決め手
- 企業にお金を使う前に、その企業が商品よりも大切なものを追求しているかどうか知りたい
- 不安なく個人データを共有し、高度にパーソナライズされた広告を当然視
- 広告や決済手続、返品まで顧客体験全体が好みに合わせて完璧にカスタマイズされることを期待
- 採用時にはショートメッセージの活用などモバイル・ファーストな素早い応募プロセスを求める
- テクノロジーを活用した成長・学習・指導の機会を評価
- 従業員ファーストの企業を最優先する
- 業務のフィードバックは1分でもいいので高頻度であることを要望
本書で一貫して主張されるのは、会社などの組織は、Z世代がもたらす社会の変化に素早く対応することで、イノベーションを起こし、競合に勝つことができるということだ。企業の未来は、これをチャンスと捉えて、Z世代に歩み寄れるかどうかにかかっている。
全世代のZ世代化は近い!? ――読んでみてどう思ったか
「あれ? Z世代ではないミレニアル世代の私も、だんだん同じように変化してきているぞ……?」
それがこの本を読んだ最初の感想でした。完全にではないにしろ、特徴として書かれていることにそこまで違和感がなかったからです。
いずれはZ世代の特徴が全世代に行きわたることになるとすると、本書の話は誰にとっても他人事ではなくなってきます。
実際に私も、Z世代の子どもを持つ親である会社の同僚から、「新しい音楽は、今の子たちはテレビから知るのではなくて、YouTubeやSpotifyなどのサブスク音楽配信サービスから知っているみたいだよ」と聞いたり、インターンシップに来た大学生からTikTokの見方を教えてもらったりして、少しずつ変化してきました。
Z世代は、子どもの頃から慣れ親しんでいるテクノロジーを駆使してこれまでの偏見を取り払い、フラットで、合理的で、本質を見抜くことができるように進化した世代だと感じます。
企業に対しても、利益追求だけでなく、社会的な貢献を求め、場合によってはソーシャルメディアで個人として発信することで影響を及ぼして社会を変化させる力さえ持っています。
そういう意味では、Z世代の今後の活躍におおいに期待したいところです。また、会社組織内でも積極的にZ世代を採用して意見に耳を傾け、取り入れていく必要があると思いました。そのためにも、Z世代に認められるような組織への改革が必要となりそうです。
P263からのイザベラを新しい職場に迎え入れるまでのベストプラクティスが興味深かったのでぜひお読みいただきたいです。「そこまでできない」と思う企業が多いかとは思いますが、逆にここまでできれば差別化が図れるのでしょうね。
気になった点としては、基本的に調査がアメリカで行われているため、取り上げられるSNSの一部には、日本では普及していないものがありピンとこないものがあった点と、日本で同様の調査をした場合でも全く同じ結果が出るかどうかわからない点です。
それを考慮にいれたうえで、ボリュームは多いもののとても読みやすい本でしたので、Z世代マーケティングの本と言うよりは、いっそ今後の世界の動向を理解する、ぐらいの気持ちでお読みいただくのがいいかと思います。
特にどんな方におすすめか
- Z世代のことを理解して経営に活かしたい企業のマーケティング部の方
- 自分がZ世代で、同世代の特徴を知りたい方
- 子どもがZ世代で、理解を深めたい方
- 世界がこれからどんな風に変化するかを知りたい方
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