『紛争でしたら八田まで』は、現在Ⅾモーニングで連載中の漫画です。
ロシアによるウクライナ侵攻について、SNSでこの漫画の「ウクライナ編」を読めば理解が深まるということが言われていたので読んでみました。
その結果、「ウクライナ編」だけでなく、全巻をとおして、そもそもどのようなことが原因で紛争は起きてしまうのか? 解決に向けてどう交渉・対話していけばいいのか? を学ぶことができました。
今回は、いま読まずにいつ読むんだという漫画、『紛争でしたら八田まで』を紹介します。
著者 | 田素弘(でん・もとひろ) |
発行年月日 | 2020/3/23 |
出版社 | 講談社 モーニングコミックス |
地政学の知識が世界を救う
主人公・八田百合は、ミニスカートにロングヘア、左目の下にあるホクロがセクシーな眼鏡美人。彼女の職業は、フリーの地政学リスクコンサルタントです。
地政学とうい学問の定義は、漫画の中で八田本人による解説があります。
地球全体をマクロな視点でとらえ、半永久的に変化しない地理的条件に注目して、世界各国の意思決定や行動・関係性を分析する学問
『紛争でしたら八田まで 8巻』p54
日本は、地政学的には周りを海に囲まれた「海洋国家」に位置付けられます。それ以外の「大陸国家」や「半島国家」とは、国民性や国家戦略に違いが出てきますので、まずはそのことを理解しなければなりません。
八田の決め台詞は「八田のチセイにおまかせを」。「チセイ」には、「地政学」と「知性」がかけてあります。
彼女は、ある目的からお金が必要で、紛争解決のために世界各国を飛び回っています。
その国の言語を習得し、文化や歴史、地理や宗教、民族や人種を理解してから現地入りします。
紛争地域に行くのは、本来女性だと危険なはず。
ですが、八田は無類のプロレス好きで、様々なプロレス技を使って相手をなぎ倒していく、格好良すぎる女性として描かれています。
八田以外にも、登場人物の女性はほぼ全員が「強め女子」なので、強気な女性が好きな人にはたまらないでしょう。
まだこの漫画は完結していません。最新刊の8巻までで出てくる国は、次のとおりです。
- ミャンマー
- タンザニア
- イギリス
- ウクライナ
- 日本
- インド
- アイスランド
- アメリカ
- ナウル
- シンガポール
- 大韓民国
私が一番面白かったのは、3巻からの「インド編」です。
ストーリーは、インドの日本企業で現地採用された超優秀なインド人、ディリップが会社に借入の申し出をしてきたので調査してほしいと八田に依頼があるところからはじまります。
ディリップは夫婦でこの日系企業に採用されており、夫婦ともに真面目で誠実、年収も高いので生活が苦しいはずがないのにおかしいといいます。八田が調査をはじめると、宗教や民族的な悲しい背景がわかってきて……。
強く美しい八田が、地政学の知識と時にはプロレス技という武力を行使しながら、その土地や人に合わせた解決方法を提示していくという物語。
漫画の合間には、監修者である東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の上級主任研究員の川口貴久さんによる解説も入っており、学びが多いです。
海外を旅した気分も味わえる
この漫画を読めば、世界のどのような場所で紛争が起きやすいのか、そして紛争が起きるのはどんな理由からかを知ることができます。
そして、八田が紛争をどのように解決していくのか、その思考や発想方法は、身近なところで起きる紛争(問題やいざこざ)にも応用可能です。
また、ストーリーをとおして、世界各国の文化や民族性を知ることができるので、世界を旅行した気分を味わえました。コロナ禍で海外旅行に行けない欲もこの漫画によって満たされます。
ストーリーは数話で完結していくスタイルですが、八田自身の両親のことや、八田の敵(ライバル?)にあたるカイのことなど、まだまだ謎が多く、先が楽しみな漫画です。
普通の漫画よりも説明の文章が多くなっているので読み応えがある漫画です。ただ、グロテスクな表現はほとんどないので安心して読むことができる点は万人受けしやすいでしょう。
無料公開している話もありますので、この機会にぜひ読んでみてください。
コメント