本を読めば頭がよくなる。本は足で踏みつけてはいけない。
私たちは日常的に、「本」という言葉を使っていますが、そもそも「本」とは何なのでしょうか?
そうだ、こういうときは、「本そのものについて書いてある本」で調べよう、と思ったところ、その「本そのものについて書いてある本」を探すこと自体が難しい。と言いますか、そういった類の本がすぐには見つかりません。
しかし、このブログは本について取り上げていこうというブログであり、このブログを見れば本のことは何でもわかる、というのを目指していきたい所存です。
鼻息荒めで、「本とは何か?」について、ここではっきりさせておこうじゃないかと心に決めました。
そこでこの記事では、「本とは何か?」というテーマについて調べて、最後には定義までしたいと思います。
本の定義を辞書で確認
「本」という言葉を辞書ではどう定義しているのでしょうか。
本は、書籍。書物。
広辞苑第七版
広辞苑によれば、本は「書籍」であり、「書物」であるということがわかりました。次に、「書籍」を調べました。
書籍は、書物。本。図書。
広辞苑第七版
「本」から「書籍」、「書籍」から「本」と往復してしまったので、次に「書物」を調べます。
書物は、文字や図画などを書き、または印刷して一冊に綴じたもの。本。書籍。図書。典籍。
広辞苑第七版
遂に内容のあるところまでたどり着きました。「本」は「書物」で、「書物」とは、
①文字や図画などが
②書かれているか
③印刷されて
④一冊に
⑤綴じられたもの
と、5つの要素に分解できそうです。
①からすると、文字や図画がないもの、たとえば、白紙のノートや手帳は除外されます。
②からすると、印刷技術がなかった時代の手書きの古文書などもそれ以外の要素を満たせば「本」になります。
③は印刷前の状態、たとえば、著者の頭の中では「本」になっているんです、でもまだ印刷はしていないんです、ということでは「本」とはいえない、ということになるでしょう。
④は、絵巻物のような、一冊とはいえない形状のものは除かれそうです。
⑤は、綴じられていないもの、バラバラの書類の束では「本」とはいえないということでしょうか。
これで、「本」のカテゴリーから、ノートや手帳、絵巻物や綴じられていない書類の束は除外されましたね。
でもまだ、日記や卒業文集などは含まれそうです。
せっかくなので「図書」と「典籍」も調べました。
図書は、書籍。本。
広辞苑第七版
典籍は、書物。書籍。
広辞苑第七版
これらからわかるとおり、「本」は、書籍、書物、図書、典籍と同義と考えていい模様です。
次に、『新解さんの謎』という本を読んでからすっかり愛着が湧いてしまった、新明解国語辞典でも「本」を調べてみました。
①人に読んでもらいたいことを書い(印刷し)てまとめた物。書物。[広義では、雑誌やパンフレットおよび一枚刷りの絵・図をも含む。]略 ②書籍・図書の汎称。かぞえ方、一点・一部・一冊・一巻
新明解国語辞典第六版
新たな情報としては、「本」は「書籍」や「図書」の汎称であるということです。本らしきものをまるっと全部「本」と呼ぶことにしよう、というニュアンスですね。
また、広義では雑誌やパンフレット、一枚刷りの絵や図を含むとあるので、狭義では反対に解釈して、それらは「本」の定義には含まれないということになります。
広辞苑は、新明解国語辞典でいうところの広義の「本」に近い意味合いで記載していましたが、一枚刷りのものは除外されていました。
ジュンク堂で「本についての本」を探していると相談
辞書だけでは飽き足らず、大好きジュンク堂に行きました。書店員さんに「本についての本を探しています」と相談しました。
「本屋で本の本を探してるってどういうことよ?」という空気は一瞬流れましたが、そこからはクールに、各階に電話して、図書館学関係のコーナーと、「エディトリアルデザイン」というコーナーにあるかもしれない、と教えてくださいました。「エディトリアルデザイン」とは、新聞・雑誌・書籍など紙媒体のデザインを指すようです。新しい分野をまた一つ知りました。
「エディトリアルデザイン」なるコーナーに行ってみると、日本エディタースクールの『本の知識』という本を発見しました。まさに知りたかったことが書いていた本だったので即購入しました。ジュンク堂さん、さすがです(回し者ではありません)。
『本の知識』では、本は次の5つの要件を含むものと定義していました。
①内容のあること
②持ち運びが容易にできる
③紙葉がとじられている
④中身とそれを保護するもの(表紙)がある
⑤ある程度の分量がある
ここで、広辞苑と新明解国語辞典で見解が分かれていた、分量の話が出てきました。
「ある程度」とは、ユネスコによる図書出版統計のための定義で「少なくとも49ページ(表紙を除く。)以上」とされていることを指しており、5ページ以上48ページ以下だと「小冊子」と呼ばれます。
たとえば、読書を月にに4冊以上する人は年収が高い、なんていう統計には、48ページ以下の「小冊子」含まれていないことになります。
さらに、ここまで確認してきた定義だと、日記や卒業文集も「本」に分類されるように思えてもやもやしていましたが、ユネスコの定義では、
図書とは、国内で出版され、かつ、公衆の利用に供される少なくとも49ページ(表紙を除く。)以上の印刷された非定期刊行物をいう。
文部科学省 図書及び定期刊行物の出版についての統計の国際化な標準化に関する勧告
とされており、「国内で出版」され、「公衆の利用に供される」ものなので、日記も卒業文集も「本」の定義からは外れることになっています。これですっきりしました。
北新宿図書館で「本についての本」をレファレンスをお願いしようと思ったら・・・
書店だと、「今入手できる本」は入手できますが、「過去に入手できたはずの本」は置いていないので調べることができません。そういうときは、図書館や古本屋の出番です。
先日、北新宿図書館で映画鑑賞してきました。
映画鑑賞の帰りにレファレンスサービスで「本についての本」をお願いしようかと思って本棚を見ていたところ、北新宿図書館には、はじめから「本についての本」の本棚が用意されているのを発見しました。図書館には本が好きな人が通うので、本についての本を集めているのですね。
そこで、『図説 本の歴史』というカラー刷りの本を見つけました。こちらは、2011年に発行されているので書店でも入手可能です。
「本とはなんだろう」という見出しのページで、本の定義を3つ挙げてありました。
①音声ではなく視覚によって伝達される情報の集積
②社会的な情報伝達の手段
③情報を運搬したり、保存したりするための手段
①については、最近では”耳で聞く本”もあるので、音声の場合もあります。
ですが、ここで著者が言っているのは、口述(ただ話しただけの音声)では「本」にはなり得ないということであって、書籍として読まれることを前提に、文字情報として編集された視覚情報、という意味合いを含んでいて、その視覚情報を読み上げたものが、耳で聞く本だと解釈すれば、矛盾はしないといえそうです。
また、②については、新明解国語辞典の「人に読んでもらいたいこと」と整合します。
③については、「保存」を目的としている、ということも定義に追加した方がよさそうなことがわかりました。
本とは何か? を定義すると
さて、ここまで見てきた「本」の要素をまとめて、私なりに「本」を定義しました。
本とは、社会的な情報の伝達や保存を目的として表紙付きで出版され、文字や図画などの中身があるものを持ち運べるように一冊に綴じられた、基本的に49ページ以上のものをいう。
この定義からすると、「本」には漫画も写真集も含まれることになります。私が「本」というときは、漫画も写真集も含んでいます。
また、電子書籍も含んでよさそうですので、とてもしっくりきますがいかがでしょうか。
今の定義を項目ごとに表にまとめると次のおりです。
基 準 | 本とは |
内 容 | ・文字情報、図画がある ・中身があること |
形 式 | ・綴じられている ・持ち運べる ・表紙がある ・出版されている |
量 | ・49ページ以上ある |
目 的 | ・社会的に情報を伝達するためのもの ・情報を保存するためのもの |
調べ出すと奥が深くて時間がかかりましたが、「本とは何か」という深淵なテーマについて考えることができ、さらに新しい言葉やジャンルと出会えて勉強になりました。
コメント